VALUE LIFE

生命を大切にする観点から、私の記憶、体験、知識などを綴ります。

よりどころ   

まだ、子どもがちっちゃなちっちゃな頃

乳離れができず、寝かしつけに往生していました。

 

幼稚園の入園が近づき、やっとのことで

寝る前にお話を聞かせてあげることを交換条件に

納得させて、毎晩 作ったお話を聞かせました。

晴れて乳離れの後も、リクエストにより恒例となりました。

 

わたしは空想する子どもだったので、お話を創作するのは

どちらかと言えば得意でした。

 

とにかく安心して寝て欲しいと思い

物語の終わりはいつも、主人公が布団に入って

ぐっすり寝るという場面で終わることにしました。

 

ふと浮かんだ場面に動物やキッチンの道具、お姫様たちが

おしゃべりを始め、ドタバタなハプニングと美味しいもの。

みんなで笑ったり、仲間を助けたり、不思議なことが起こったり。

 

いくつもの主人公が生まれ、お話をミックスして

長編になったりして、結局 話しているうちに話が終わらず

時間延長になり、笑ってしまって寝なかったりして

寝かしつけとしては、効果は薄かったのですが

濃いコミュニケーションの時間だったと思います。

 

わたしが寝落ちて、話が止まったことに子供が怒って

叩かれたり蹴られたりしたこともありました。

疲れが溜まっていたために、うまくできず

子どもを理不尽に怒ってしまったこともあります。

 

もう少し大きくなると わたしの話にも飽きて

自分で本を読む方が面白くなって、友達が持っている

ゲーム機の方が興味が惹かれて、ステージが変わっていきました。

 

ある意味、全力でやったことだったので

わたしの中では子どもとの思い出の一部でした。

 

 

 

やがて 子どもが成長するにつれ、

親が子どもの行動を決めるような流れではなく、

相手の考えや個性を尊重していることが伝わらないと

うまくいかないと感じるようになりました。

 

 

わたし個人の経験では補えないと感じる事態が

度々起こるとき、気持ちの理解や疎通がうまくいかなくて

わからないという思いを何度もしました。

 

 

毎日あまりうまくいかなくて 気落ちしていたので

より一層、わたしの言葉は、相手にとって不快な響きを

含んでしまうようでした。

わたしの本当の心の声よりも、重く厳しく責めているように

聞こえるようでした。

 

それは困ったことでした。

伝えたいことが伝わらず、話がややこしくなりました。

 

 

本当は、ちゃんと相手の話を聞いたり、それを

受け止めたりしたかった。

なんでも話してみて欲しかった。

話したことによって、成長につながる気づきが

見つかるような雰囲気を持ちたかった。

 

 

でもそれが、わたしはできていませんでした。

 

自分を見つめると、わたしの中に子どもの自分がいて

その子が自分の気持ちを聞いて欲しがっていて、

見たもの聞いたものに対して言いたいことがあり、

誰にも充分に聞いてもらったことがありませんでした。

 

 

わたしはやっと、自分の中の子どもの話をしっかり聞いてあげないと、

この状況は変わっていかない、変えていくのは難しいと思いました。

 

 

子どもは 親との関係を入り口として

居場所のある安心感、よりどころがある感覚を育むと思います。

それが、生きていくための深いところからの力でもあって

これがあるかないかは人生に大きく関わる気がします。

 

 

 

子どもにお話を作って聞かせる前から

遊びの中でぬいぐるみの声色をわたしが担当していました。

 

プレゼントされたり、景品でもらったりしたぬいぐるみや

ミニカー、木のおもちゃに子どもが名前をつけて、

様々な物語が生まれました。

 

その中に、お母さんキャラクターのぬいぐるみがあり

それは決して声を荒げることのなく、いつも優しい言葉で語り

みんなを支える包容力とユーモアに溢れた性格で

常に大騒ぎになり、ドタバタが起こるぬいぐるみ大家族にとって

みんな大好きな心のよりどころ です。

 

 

わたしは、このキャラクターに小さなわたしの話を

心の中で、呟くように話しかけてみました。

 

 

「ねえ・・・」「あのさあ・・・」と心の中の

つらいことや、嫌だったことや、悲しいことを話しているうちに

勢いよく出てくる文句の先に、言えないで燻っていた理不尽な思いが

どのようにたたまれていたのか、紙を開くように言葉になってきたり

ま、いっか・・・と深追いしない思考に変わっていったりして

わたしの心は穏やかに落ち着いて行きました。

 

 

さらには、そんな考え方してなかったなというような

思いがけない答えを返してもらえることがありました。

 

 

誰かに聞いてもらえる体験とは、こんなにホッとした気持ちになり

安全な場所をもらって 心落ち着くことができるのかと、

思った以上の効用を感じました。

 

 

その安心した気持ちと声は、さっそく子どもと話すときにも役立ちました。

 

キャラクターが話すリズムとトーンで話をすると、

おもしろいほどに軽やかに会話が始まり、

子どもが話し出す言葉の量が違いました。

 

どうして、言葉が足りなくなってしまうのか

伝えたいことがそのまま伝わらないのかの理由は

こんなところにあったのかと思います。

 

 

心の中によりどころがあれば、だんだんそれが

できるようになっていくとわかりました。

 

 

しばらくは、このまま会話を続けて、

何かと心のよりどころに支えを得てみようと思います。